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7月7日

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少し前のことになりますが、ラルス・フォークトというドイツ人ピアニストのコンサートに行ってきました。

いつもながらベートーヴェンのピアノソナタ32番がプログラムに含まれていたからです。私は彼のことをほとんど知りませんでした。

ほとんど、と含みを持たせたのは、5年ほど前に32番のCDを集めていて彼の録音したCDがあることを知りましたが、

その時点でそのCDはすでに廃盤になっていて入手できませんでした。それ以降、何の接点もなかったというわけです。

 

コンサートのプログラムは少し変わっていて、前半がシューベルトのピアノソナタ19番、後半がベートーヴェンのピアノソナタ32番がメインでしたが

どちらも演奏前にシェーンベルクの6つの小品op.19という曲を弾き、そのままシューベルト、ベートーヴェンの曲につなぐ、というものでした。

つまり、同じ曲を2度演奏するわけで、また曲が続くようにシェーンベルグの演奏後には拍手をしないよう、コンサートが始まる前に注意がでていたのです。

プログラムのフォークトの解説によれば、「この作品(シェーンベルク)をシューベルトとベートヴェンの直前に演奏することで、

これら二つのソナタが実にどれだけ幻想性に富んでいるのか、より強く感じでいただけると思います」とのこと。

 

この組み合わせは、ノルウェーのピアニスト、トール・エスペン・アスポースのMirror Canon というCDでも試みられています。

音楽を専門的に分析する能力のない私には、演奏家たちがこの二曲にどのような共通項を見出していたのかわかりません。

Mirror Canon の解説ノート(英語)を何となく眺めるとウィーン音楽学校という共通項で選ばれたようなことが書いてある?ようですが・・(汗)

フォークトのプログラムは二曲ともハ短調なので、調性の相性もあるのかもしれません。

 

と、まぁ格好をつけた前置きにしてみましたが、私としてはシェーンベルクにあまり興味がなく、ピアニストのこだわりとして受けとったものの

有っても無くても(フォークトさん、すみません・・)というのが正直な心情でした。

まぁ、当日はNHKのカメラが入っており、8月28日(金)にクラシック倶楽部での放送が予定されています。

その時、おそらくこのプログラムの意味を本人のインタビューで聞くことができるのではないかと期待しています。

 

〜当日の感想メモから〜

『エッジの効いたピアニズム。知的で、シャープな音楽を奏でる。ドイツ人らしく曖昧な解釈を好まず、自分なりのフォルムを彫り出していくような音楽。」

その分、メロディの流れ“歌”のようなものを拒否するように感じるところも多く、私の記憶ではシューベルトの19番は歌うような旋律が

音楽の主流を占めている曲だと感じていたが、(私の記憶にあった演奏は内田光子によるものだった)フォークトの奏でる19番は

ずいぶん異なる音楽になっていた。もう少し、その瞬間瞬間の小さなピースの輝きをつなげていくような曲の構築の仕方をするというか・・。

 

後半、アリエッタは堅い印象の演奏になるのではないか、という私の予想は良い方向にハズれ、丁寧で繊細な演奏。

各パートへの性格付けも豊かで、後半のクライマックスへの盛り上げる展開も構成に組まれて聴かせてくれた。

しかし一見、アリエッタの押さえ所を的確に押さえた演奏なのだが、私はなぜか演奏に浸れなかった。

詳しく自己分析はできないが、第一印象の「彫刻のような音楽性(余分なものをそぎ落として音楽を作る)」シャープさが先に立ち、

アリエッタのふっくらとした暖かみに欠いているように感じたことが原因ではないかと思う。』